毎年200トン廃棄される、浜名湖の牡蠣殻の行き場
浜名湖では旬の時期になると新鮮な牡蠣が出回り、地元の食卓や飲食店をにぎわせます。
ところがその一方で、大量に出る「牡蠣殻」の処理が長年の地域課題になっています。毎年およそ200トン発生している牡蠣殻は集積所で山積みに。
この牡蠣殻はあくまでも産業廃棄物として取り扱われるため、地元の漁師さん達の負担によって処理・処分されています。
処理にお金がかかるだけでなく、資源として使える可能性があるものをただただ処分し続けるのはもったいない…
今回は、そんな地域課題に向き合う地元の漁師さんとのコラボです。
捨てるだけではもったいない、資源となる可能性を模索
牡蠣殻にはカルシウムをはじめとした成分が豊富に含まれており、「資源」として活かせる可能性があります。
現在、地元漁師さん達の手によって資源としての活用方法が日々模索されています。
そのなかのひとつが“パウダー状にした牡蠣殻”を肥料や飼料として再利用する取り組み。
農業用肥料や養鶏・畜産用の飼料として活用することで、新たな活路を見出されました。
そして今回、「牡蠣殻を建築資材として活用できないか?」というご相談をいただきました。
トット建築として「“地域の建築工務店”として何か貢献できることがあるのではないか」と感じたことが今回のコラボに繋がりました。
牡蠣殻が「漆喰」に!?建築資材としての活用プランを提案
「牡蠣殻を漆喰にしてみましょう!」というアイデアは漁師さんからも驚きの声をいただきました。
そもそも漆喰(しっくい)とは石灰を主成分とした自然素材で、日本の建築に古くから使われてきました。
湿気を調整したり、抗菌作用があったりと、住まいを快適に保つ性質を持っており、見た目にもやわらかなで優しい質感が特徴です。
例えば、湿気を吸放出できる断熱材「セルロースファイバー」を使った場合、漆喰のような「呼吸する自然素材」との相性は抜群!
今回の取り組みでは、粉砕した牡蠣殻を漆喰に混ぜ込み、“左官材”として活用していきます。
漁師さんの想いを引き継ぎ、粉砕された牡蠣殻を施工現場へ!
積み上げられた牡蠣殻は漁師さんの手によって一カゴ分ずつ粉砕されて、パウダー状に。
こちらのパウダー状の牡蠣殻を左官材として漆喰に混ぜ込んでいきます。
混ぜ込んだ直後は磯の香が現場に漂い、まるで浜名湖の漁港にいるかのような気分に。
粉砕されたパウダーの中には若干荒い牡蠣殻の粒子も混じりますが、今回は敢えてそのまま使用。
こうしてできあがった“浜名湖産漆喰”は地元の左官職人さんの手仕事によって丁寧に塗られていきます。
親子で受け継ぐ伝統の技
“浜名湖産漆喰”を実際に塗っていただいたのは地元浜松の左官職人さん。
お父さんが熟練の左官職人さんで、現在は息子さんがその技を受け継ぎ活躍なさっています。
「牡蠣殻を漆喰として使いたい」というアイデアにも柔軟に対応いただき、また完成形のイメージを共有しながら作業を進めることができました。
トット建築の現場でもたびたびお世話になっている頼もしい職人さんです。
仕上がった浜名湖産漆喰の空間
塗りと乾燥を数回繰り返し、ついに「浜名湖産漆喰」が完成!
荒い牡蠣殻の粒子をそのまま塗ったことで唯一無二の“表情”が生まれました。
通常の漆喰と同じように消臭効果や、室内の水分を吸放出し湿度を一定に保つ効果を発揮します。漆喰は寝室・トイレ・脱衣室の壁面に使用。
室内側の漆喰の壁を上手に“呼吸させる”ためには、それ以外の部分にも工夫が必要です。今回のリノベーション施工ではもともとの土壁を残し、壁面の内側に湿気を吸放出できる断熱材「セルロースファイバー」を使うことで、漆喰の壁が“呼吸”し、暮らしやすい湿度が保たれる空間を実現しました。
梅雨時でも冬の過乾燥の時でも、必要な水分を部屋に放出したり、不要な水分を壁に吸い取ってくれます。
家づくりやリノベーションでの魅力
・自然素材ならではの心地よさ
調湿性や抗菌性に優れ、湿気の多い日本の住まいとの相性がとても良いです。
・デザイン性と環境配慮を両立
独特の風合い・表情を見せてくれる質感が生まれます。
住宅だけでなく店舗にも雰囲気・デザインになり、地域社会や環境への配慮につながります。
・今あるものに新たな価値を生み出すヒントに
「今あるものに新たな価値を生む」という考え方は、古い建築物を新たな形・価値で生かすトット建築のリノベーションとも重なります。
漁師と建築士・工務店が踏み出すサステナブルな未来への一歩
この取り組みは、漁業に携わる人と建築の専門家が協力し合うことで実現しました。
処理に困っていた牡蠣殻が、暮らしや住まいを支える素材へと生まれ変わる…そこには「地域課題をものづくりの力で解決する」という新しい視点があります。
牡蠣殻を漆喰として活用する試みは、地域の課題を“資源”としてとらえ、循環させていく取り組みの一例です。
今回は「建材」としての活用提案でしたが、こういった試みがきっかけとなり様々なアイデア・活動に結び付くことでより大きな可能性が開けていきます。
これからもトット建築は、地域密着の工務店として地域の課題に積極的に向き合い、新たな価値を創出する企業であり続けます。
ぜひ弊社でお手伝いできること・協力できることがございましたらお気軽にお問い合わせください。